--Pi Pi Pi Pi カシャ!

けたたましい音が朝を告げる。

あともう少し、せめてあと3分。そんな願いは奴には届かない。

目覚まし時計の音を止め、恨めしげに見やるも、奴は無言の威圧を放つ。

”さっさと起きろ"と

なんて可愛げのないやつ。買った時はシンプルなデザインだが、そのなかにスタイリッシュさを感じだったアナログ時計。

はぁと、ため息ひとつつき、男は布団に再び潜る。

お気に入りだったのに、なんなんだろう。

日に日に奴との関係が悪化していくような気がする。
仲のいい同僚に相談したら返ってきた言葉が

『お前、頭大丈夫か?』だ。

言うんじゃなかったと心底後悔した。

もう一度、ちょっと腹立ちまぎれにジロリと睨みつける。

カチリ。針の動く音に促され時計の針に目を止める。

スっと血の気が引く。

「ヤベー!!」


男はベッドからはね起きる。
バタバタと慌ただしく身支度を整えたかと思うと、まるで突風の如く家を飛び出して行った。

「やれやれ毎朝、毎朝、忙しない御仁だ」

小さなつぶやきとともにため息がこぼれる。
知らぬは男ばかりなり