「私は一般論を話しているだけです。それに事務所のいち社員としても、その子が真央と付き合うのはあの子にとって良い影響を与えるとは思えないけど?」
「そこに私情が入ってるようにしか僕には見えませんけどねぇ」
カシャン、と水の中食器のぶつかり合う音が響いた。
それと同時に花乃さんは私へと怖い位微笑みを落とした。
「あなたにもいずれ分かるわ。大学生なら普通の男の子と付き合っていた方が幸せだって事」
それだけ言い残し踵を返してソファーの所へ行ってしまう。
「気にする事ないよ。」
「昴さん、ありがとうございます。助けてくれて…」
「俺は静綺ちゃんの辛そうにしてる姿は見たくないだけなんだ。
それにさっき岬が言った事もあんまり気にしない方がいいよ。花乃さんと真央が付き合ってたとは思えないし
マネージメントの手伝いをするのも真央が忙しくなってきたからだ。何も気にする事はない」
昴さんの言葉に曖昧に笑った。
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そしてその日パーティーはお開きになった。
誰にぶつける訳にもいかない怒りは矛先がなくなって、宙をぶらりと彷徨っていた。
私には、岬さんがあの人が嫌だっていう気持ちがほんの少し分かる気がするから。それは私のただのヤキモチだったのかもしれないけれど、私の見たことのないような温厚な顔で笑う真央の顔が頭から離れなかった。
「ちょっとー!歩けよー!」
「うー飲みすぎたー」
さぞかしパーティーが楽しかったんでしょうね。お酒が弱い癖に飲みすぎた真央を抱えながら、自室へ運ぶ。



