【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜


「今日も真央がオフだからあなたと過ごしたって聞きました。」

「はぁ…まぁ…」

「私にとっても事務所にとっても真央は大切な子だから、あんまり困らせるような事は止めてあげてくださいね?
芸能人と一般人が付き合うって言うのはあなたが考えているよりずっと難しい事なの。真央程の売れっ子になればなるほど、ね?
だから彼女のあなたがもう少し気をつけてあげなくちゃ。あの子は自分の気持ちのままに突っ走ってしまう所があるから」

え。
何であなたにそんな事を言われなくちゃいけないんですか?

言っている事は正しいのだけど、私達の事何も知らない人に言われたくない。
それでも彼女は私の隣で平然とお皿を洗いながら、全く顔色を変えない。

瑠璃さんや岬さんのような派手さはないけれど、落ち着いていて整った横顔。でも気は強そうだ。

彼女の正しい言葉に反論の余地はなく、黙り込んでしまう私は気が弱い。こんなに気の強そうな顔をしているのにいざと言うと何も言い返せない。

肩に優しい熱が伝ってくるのが分かって、後ろを振り返るとそこには昴さんが立っていた。

「花乃さん、静綺ちゃんを責めるのは違うでしょう?」

いざとなると、いつも助けてくれた人。肩を掴んだ手が温かい。

「昴…」

「芸能人と一般人が付き合うのが難しいのも人それぞれだと思いますけど」

昴さんが来て、花乃さんが一歩後ろへ退いたのが分かった。
人がピンチの時に助けに来てくれる。相変わらず王子様みたいな人だよ。
それでも彼女は怯むことなく笑顔を取り繕った。