「何故そこで昴の名前が出る?」
「べ、別に深い意味はないけど。だって一緒にドラマ共演してるしッ!」
そう、深い意味など全くない。
昴さんとは真央と出会ったグリュッグエンターテイメントの寮で出会った。真央と人気を二分する若手俳優大滝昴だ。
一緒に過ごしていくうちに昴さんとは仲良くなり、そして告白されたのである。今でも何故私を好きになってくれたのか不明なのだが、有名人なのに気取った所もなく、とても優しくてかっこいい彼にときめいたのは紛れもない事実。
付き合って欲しいと言われたけれど、その時既に真央に惹かれていた私は彼の告白を断った。
その時は自分の中にいた悪魔が’これでいいの?’と何度も囁いたものだ。 それでも私の真央を好きだという気持ちは止められなかった。
「まさかお前…昴とまだ連絡を取っているのか?」
昴さんは寮を出て行った。
けれど現在撮影中の冬の連続ドラマは、真央と昴さんがダブル主演の、グリュッグエンターテイメントでかなり力の入れているドラマなのである。
「別に取ってねぇよ…。たまぁーに…」
「はぁ?!何で着信拒否してねぇんだよ!」
「何で着信拒否しなきゃいけないのよッ?!
…昴さんは友達だし別にあんたが思っているような事はないよ!」
「お前がなくともあいつにはあるかもしれねぇだろ?!
大体あいつはお前に振られたのも教えてくれない腹黒い男だぞ?!
腹の底では何を考えているか分かったもんじゃねぇ」
「なッ…昴さんはあんたとは違うわよ!」
「昴を庇うとか気分が悪い。俺は仕事に行く!そろそろ坂上さんも迎えに来ているだろ!」



