お。
数人に囲まれて嬉しそうに笑っている。事務所の関係者だろうか、山之内さんと坂上さんが居て、そこには数人。
あんなに機嫌が良さそうな真央を見るのも珍しい。
ん?
見慣れない数人の中に、ストレートの髪が腰近くまであるモデル顔負けのスタイルの女性が立っている。岬さんともまた違う、大人っぽい雰囲気を持っている人だ。
その女性は真央の肩に手を掛けて、何かを話しながら頬を緩ませる。そして真央も真央で親し気に彼女へ視線を向ける。…え?何その穏やかな顔。
真央は基本的に女性とは余り話さない。ドラマ現場でも共演女優からは距離を置かれるオーラを放っているらしい。
瑠璃さんや山之内さんとは仲が良いけれど、あんな余所行きの顔はしない。それは岬さんにしたってそうだ。
不安で胸がキュッと苦しくなるのを感じる。あんな風に穏やかな表情を、私の知らない女性に見せるなんて。
こそっと岬さんが耳打ちをした。
「グリュッグエンターテイメントの社員よ、あの人。私昔っから嫌いだったの。真央が忙しかった時サブマネージャーみたいな仕事してたのよ」
「え?!社員なんですか?すっごく綺麗な人だからてっきりモデルさんか何かかと思った…」
「嫌な女よ?確か28歳位だったじゃないかなー?一時期真央と付き合ってるとか噂もあったし」
「ひぇ?!」
頭が一瞬真っ白になった。
大人の女性。私とは大違い。あんな綺麗な人とも付き合っていたなんて…。
「おい、岬適当な事ばかり言うなよ」
「だって昴!あの時絶対真央あの人の事好きそうだったもん!」
岬さんの言葉は私を悪戯に不安がらせるような類のものではなかったと思う。



