険悪の車内。ずっと無言が続いて、りっちゃんがハラハラとした表情を浮かべる。私の友達にまでこんなに気を遣わせてマジでムカつくな。姫岡真央。
寮に着いて車を降りたら、バチっと真央と目があったけれど、大袈裟にあっちの方へ首を向ける。そんな私の態度を見て、真央は両手をわなわな震わせて大きな足音を立てて寮内へ入って行く。
…喧嘩をしたかった訳じゃないのに。せっかくの誕生日、楽しく過ごしたかったのに。
「静綺…何か姫岡さんを怒らせるような事を言っちゃってゴメン…」
「りっちゃんのせいじゃないって!あいつが子供みたいなのよッ…」
申し訳なさそうなりっちゃんの表情を見て、真央の背中を蹴り倒したくなる。
しかし寮内に入ると、既に誕生日パーティーの準備は終えていて、食堂に入った瞬間にクラッカーが鳴り響く。
真央は偉くアホ面をしていたと思う。
バルーンやお花で飾り立てられた室内。テーブルに並んだご馳走の数々。
そしてそこには寮内の皆と、知ってる顔がちらほら。知らない顔も居た。恐らく真央の所縁のある人なのだと思うけれど。
皆でハッピーバースデーを歌って、大きなケーキを山之内さんと坂上さんが持ってくる。真央の写真入りだ。こんなケーキテレビの中のキャバ嬢やホストのバースデーイベントでしか見たことがない。
さすがにこのサプライズにはさっきまで怒っていた筈の真央も照れくさそうにぶっきらぼうに笑った。
「真央ー!誕生日おめでとう!」
「何だよ、皆して集まって」
「真央の誕生日だからってサプライズパーティーをしようって静綺ちゃんが提案してくれたのよ」
「静綺が?」



