【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜


「弁護士のどこがかっこいい」

低く掠れた声が車内に響く。
信号で車を停車させ、私を強く睨む。その時やっと失言をした自分に気づいた。

余りの真央の豹変ぶりにりっちゃんは隣で私の顔を見て、私なんか言っちゃった?と気まずい視線をぶつける。

「いや、一般的に弁護士はかっこいいでしょう?」

「どこがだ!」

「どこがって……司法試験は国家資格でも最難関と言われていて」

「そんなん俺だって知ってる!お前俺が高卒なのを馬鹿にしてんのか?!」

「はぁ?!そんな事一言も言ってないじゃない?!何勝手に被害妄想になってんのよッ!」

「馬鹿みてぇにキャーキャー騒ぎやがって。これだから女は高学歴の男と玉の輿婚人生の勝ち組とかくっだらねぇー話しかしねぇんだろ!
それに何だぁ?!同窓会だと?その雄太とやらがお前を好きだったのは小学生の頃だろう?弁護士を志すような男が今でもお前を好きだと勘違いしてんじゃねぇぞ?」

はぁ?!!!

何の言いがかりだ。私そんな事一言も言ってないし、そもそも真央が高卒なのを馬鹿になんかしていない。

何をそんなに怒っていると言うのだ。

チッと舌打ちをしたままこちらを睨みつけ、ぷいっと顔を背けたかと思うと車を乱暴に運転させる。

真央の豹変ぶりをみたりっちゃんはこそっと私へ耳打ちをした。

「ひぇー…ヤキモチ妬きなんだねぇ」

「馬鹿みたい。ムカつくな…」

せっかくさっきまで良いムードだったのに、直ぐコレだよ。

私は弁護士よりもどんな仕事をしている人よりも、真央のしている俳優って仕事がかっこいいと思ってるのに…。

でも今回は絶対に私は悪くない。勝手に勘違いして怒っている真央が悪い。…謝らないからね!