Act 4  誕生日パーティーと過去の女。




温もり。息づかい。触れる繊細な指先。包み込む独特な空気。

宝物を大切に扱うように、私にあなたが優しく触れてくれるから、泣きそうになるんだ。ずっと優しい人だって知っていた。何よりも繊細で壊れやすい筈のあなたが、私をそれ以上に繊細に扱ってくれるからまた嬉しくなる。

そしてあなたの指が私の全身を触る度に、それに反応してしまう。ビクビクと身を震わすたびに、真央は意地悪な笑みを浮かべて直ぐに、優しく微笑む。

「大丈夫?痛くない?」

こんな時に限って投げかける言葉は優しい。そして心配そうな眼差しを向ける。そんな美しい顔で痛くない?って訊ねられて本音を言える訳がない。

「ん……大丈夫…」

(すっごい痛い!)
(私死んじゃうんじゃないか?!)
(何このすっごく不快な異物感!)

真央の指は私の首筋から足の先までそれはそれは丁寧に愛撫をしてくれた。

それを気持ちがいいと感じる余裕もさっきまではあった。そういう経験は今まで一度もなかった。だから声が思わず漏れてしまうなんてのも絶対に嘘だと思っていた。

けれど人間の本能とは恐ろしい物でその場その場に順応する力があって、この心をかき乱していく様な欲望に似た気持ちは煩悩なのかもしれないけれど。

声は勝手に出るし、身体は真央の指に従って面白い位反応する。

けれどそれとこれは話が別だ。

「しず…静綺?」