真央は名残惜しそうに「僕はもっとお母さまとお話ししたいんですけどね」とシュンとした表情を見せる。その言葉にキュンときたのか母は更に頬を赤らめて少女のような顔を見せた。
絶対騙されてる!やっぱりあんたに俳優は天職よ!
帰り際母が耳元でぼそりと呟いた。「よくやった!」と。
真央が真央なら、お母さんもお母さんだけど、本当に呆れる。ミーハーでイケメン好きの母を持った事が恥ずかしい。
実家を出て車に乗り込んでも真央の笑いは止まらない。偉く上機嫌そうだ。自分の実家に帰った時よりもずっと。けれどきっと真央の実家に居た時の不機嫌そうな姿が照れ屋な彼の本質なんだろうけど。
「あーはっはっはっ!お前のかーちゃんはいいな。」
「ぜんぜっん良くない!恥ずかしい!真央のお母さんと違って普通のおばさんで恥ずかしい…」
「そうかー?面白いかーちゃんじゃん。お父さんに会えなかったのは残念だったけど」
「お父さんも真央のお父さんとは全然違うよ。昔っから自分の趣味にばっかり没頭してるんだから、私やお兄が小さい頃遊んでもらった記憶なんてひとつもないんだから。
まぁお母さんもお母さんでお父さんを’顔’だけで選んだらしいから!」
その言葉に真央はまた笑った。
「お兄ちゃんにも是非会いたかったけどな」
「お兄は私と6個も離れてるし大学から地方に行ってるから更に話してないよ。
でももう結婚もして家族も居て幸せそうだよ」
「まぁ…いずれ紹介してもらおうかな。お父さんもお兄ちゃんも」



