「何だよ、お前…。
俺とデートなんてしたくないって事か…
俺はお前と遊園地に行ったり水族館に行ったりしたい事は沢山あるのに…。
それに沖縄だったり北海道だったり旅行も行ってみたいぞ…」
被害妄想もお手の物。けれど真央が私と色々な場所に行きたいと思ってくれているなんて、それはそれでニヤケてしまう程嬉しい。
遊園地に水族館。…旅行も確かに良い。沖縄も北海道も行った事はないし。
「そういう事じゃなくって、私はあなたがお仕事を頑張ってくれているのが嬉しいのですよ。
それに毎日のように会えるし、会えない時間でもテレビの中で見つけると会ってる気分にもなるしね」
「お前……」
座っていた椅子から立ち上がりこちらへやって来たかと思えば、真央は私の顔を自分のお腹辺りに抱き寄せて嬉しそうに何度も頬ずりをする。
この男、かなりの天邪鬼につきまして…たまに甘える時は子供のような顔を見せて、私はとてつもない溺愛を受ける。
いつもはこんな甘えた顔は見せない。そして私は真央のこのギャップが好きだ。たまらなく愛しくなっていく。
そして先程の言葉は本音である。
私は姫岡真央の演技が好きだ。自分の彼氏だからといって贔屓目で見ているのではなく、お芝居をしている時の彼は世界で1番かっこいいのだ。
けれども彼は子役時代から芸能界に居て、一度芸能界を離れている。そして復帰してからも一度、精神的な事が原因で芸能活動を休止している。
意地悪で王様な性格だけど、その中に隠された彼の本性はとても繊細で儚く崩れやすい。
それでも演技が好きだと言った。その彼が快適に演技をしていく為に私が必要というのであれば、何だってしてあげたい。



