それには同感。
まさか言うつもりもなかった。
私との交際を反対されたなんて言ったら、社長との仲が悪化してしまい仕事が貰えなくなったらそれはそれでいたたまれない。
あくまでも真央の仕事の邪魔はしない。付き合う時に自分の中で約束した事。それを考えれば、あの人の言う通り真央と別れるのがベストなのかもしれないけど…。
そんなネガティブで縁起の悪い事を考えないように、無心でキャベツの千切りをした。
「つーかさ、社長めっちゃ怖いよね。瑠璃なんて下っ端だから会う事なんて早々ないけどーちょー怖い。
一見インテリっぽいのにヤクザ紛いの事もするって噂だけどねぇー。さすが芸能界の帝王だわ」
瑠璃さんがソファーに寄りかかりアイスを食べながら言う。その横で山之内さんは無言のままこくんと頷く。
「私……真央って社長さんから気に入られていると思ってた…」
そんな話をいつか聞いた気がするのだけど。
だからこそグリュッグエンターテイメントの看板は真央であるのだと。
「真央を気に入ってるのは先代の社長ね」
「あ!すごい人なんだよねぇ。瑠璃だいすき~。会長~」
「会長さん?」
「つまりは長岡さんの父親って事なんだけど…。
会長とは言ってもまだグリュッグでの決定権は会長にあって…
社長はその会長のやり方をあまり良く思ってないから、内部分裂してるのよグリュッグは…」
「そう、なんですか…」
じゃあさっき長岡さんが言っていた’あの人’って言うのは恐らく会長の事か。



