【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜


「それは君が幼き頃から真央を見ているからだろう。仕事に私情を持ち込まないでくれ。全く君は’あの人’にそっくりな考えを持っていて参る。
姫岡真央のピークは子役時代。彼の旬の時期はとっくに過ぎている。
私だって真央が誰と付き合おうとそんな事はどうでもいい!勝手に自分の可能性を潰してくれるのならばそれで結構!
姫岡真央の代わりは幾らでもいる。それでも君やあの人がいつまでも姫岡真央に拘るから…だから私だってこうやって仕事をしているだけじゃないか」

’姫岡真央のピークは子役時代’
’彼の旬の時期はとっくに過ぎている’

聞き捨てならなかった言葉たち。 足の震えはとっくに止まっていた。

真っ直ぐと向き合って長岡さんの顔を見つめると、もう笑顔は取り繕っていなかった。厳しい眼差しだけをこちらへ向けるばかり。

「…その言葉だけは取り消してください…」

「は?」

「姫岡真央のピークは子役時代じゃない!あの人は今もこれからも輝ける人です。
姫岡真央の代わりなんて昴さんでも誰でも務まるはずがない!」

思わず啖呵を切ってしまい、隣に座る山之内さんはオロオロとし出す。

長岡さんは目を大きく見開いて、珍しい物でも見るような顔で私を一瞥した。そして乾いた笑みを浮かべた。

「そりゃあ彼女である君には真央は特別な人間に見えるでしょう」

「彼女だからじゃないわ。だって私は芸能人なんて全く興味がなかったし、演技の事は全く分からない。
けどそんな私でも彼の演技を見てドキドキしたり笑ったり悲しくなったり色々な感情になったりした!
そして何よりも彼自身が演技を好きで努力を沢山している。
真央は自社のタレントでしょう?!社長であるあなたがそんな事を言わないでよ!」