Act 2  芸能界の帝王君臨。




人生最後の日は意外に呆気なくやって来るものなのだと実感している。

芸能界の帝王。なんじゃそのあだ名。しかしこんな馬鹿な私でも理解る。グリュッグエンターテイメントは長く続く歴史のある芸能プロダクションで、所属タレントの中には私達のお母さん世代でも知っている現在大女優と呼ばれる伝説の女優や

昔トレンディードラマで毎回主役を張っていた演技派俳優も…。数々のシリーズドラマを成功させた若くして亡くなった大物俳優さえ、このグリュッグエンターテイメント所属のタレントであったわけだ。

その会社のトップ。そして業界のトップ。帝王と言われるのに相応しい人間。


私…もしかして抹殺されてしまうんじゃないだろうか。

罪名は今旬のグリュッグエンターテイメントの人気俳優に手を出してしまったから。…いや!手を出したは少し語弊があると思うが?!

けれど事務所からしてみれば真央は大切な商品な訳だ。人間だけど。

自社の商品に勝手に手をつけられちゃたまったもんじゃないという考えは理解出来ない事はないが。

長岡さんは事務室にいる。とたっさんに言われそこに通される。

私が来るまでごちゃごちゃと汚かった事務室はすっかり片付けられていて、今でも週に数回掃除は欠かさない。

きちんと整理整頓された棚も机も今でも見違えるように綺麗だ。

事務室の来客用のソファーに座る山之内さんの黒く艶やかな髪の毛が見え、その対面にはまだ…50代位だろうか…スーツをビシッと着こなす神経質そうな男が顔をしかめて座っている。