【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜


「そうね」

「こちらこそ真央をよろしくお願いします。これから絶対すっごい役者になるはずだから。そんなの素人の私なんかより山之内さんの方がずっと分かっているんだろうけれど」

「ふふ」

「えへへ」

この寮でバイトが出来て良かった。皆に出会えて良かった。
春は別れと出会いの季節――。

あるべき居場所が違ったとしても、出会えた時間を忘れる事はないだろう。
ここで過ごした日々の事、きっといつまでも胸の中に刻み込まれる。

―――――


6月終わり。
真央と出会って1年。再び巡り合った夏が訪れようとしていた――。

4月から社会人になって、施設での仕事が始まった。施設での仕事と言う事で始めは先輩に仕事を教えて貰う傍ら、栄養士と言うよりも調理師という形態での仕事が多めだった。

大きな施設と言う事もあって社員よりもパートのおばちゃんが大半を占める職場だった。人間関係超複雑!女同士、しかも主婦が多い職場というのは、大学で若い女の子同士が集うのとはまた雰囲気が全然違う。

その施設内でおばちゃんパワーに最初はタジタジだった。人見知り超発動。私は果たしてここでやっていけるのか?けれど1か月が過ぎた頃にはこの職場の雰囲気にもすっかりと慣れて、おばちゃんとの世間話も楽しめるようになった。

休憩時間。不意に起こったいつもの世間話の中。

「そうなのよ~、姫岡真央ねぇ」
その名前を聞いて、思わず肩がびくっと上がった。

「私、子役の頃から知ってるのよ?」
「あら、私だって。この間の連続ドラマ見た?かっこよかったわよねぇ」
「あら、私は大滝昴派だけどね、大人っぽくってかっこいいじゃない」
「姫岡真央は母性本能をくすぐるタイプなのよねぇ~」