【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜


この寮でバイトを始めようと思った時は不安だらけで、でも色々な事があって皆との絆は日々大きくなっていった。

実家で過ごすよりもここで過ごす時間が長くなった。

月のまんまるの綺麗な春の夜は旅立ちの日だ。

皆すっかり酔いつぶれてしまって、食堂で眠りこけた。勿論私はお酒は真央に深く禁止をされているのでほろ酔い程度。

キッチンで後片付けを終えて、エプロンを外し椅子に掛ける。

『卒業おめでとう』真央から連絡が届いていた。あの月の淡い黄色のように温かい気持ちでいっぱいになる。

食堂の窓からぼんやりと月を眺めていた。

「静綺ちゃん…」

「山之内さん大丈夫ですか?飲みすぎですよ。」

「えぇ大丈夫。てか静綺ちゃんの送別会だってのに後片付けをさせてごめんね?」

「全然大丈夫ですよーッ。まだここでアルバイト中です。そしてこれが私の仕事であります。」

くすりとお互いに顔を見合わせて笑い合う。
少しお酒の入っていた山之内さんは良い意味でいつもよりきちんとしていなかった。

いつも肩肘を張って仕事一筋のかっこいい女性。そんな人が崩して笑うと、案外可愛らしかったりする。

窓枠に体を預けて、微笑んだまま俯くと

「静綺ちゃん卒業おめでとう。
そして本当にありがとうね」

「何がですかー?」

山之内さんの視線の先には、先ほど受け取ったハート型の薔薇が眩い輝きを見せる。