Act 12  たった一人のヒロイン。




卒業式。袴はレンタルで赤いのを借りた。

真央が’静綺には絶対赤が似合う’としつこく言われたから。そういえば昔プレゼントで貰った浴衣も深い赤色だった。自分では似合うかどうかは分からない。

しかし真央は現在イタリアに撮影に行ってしまい、日本には居ない。


イタリアに撮影に行く前に真央は私の両親に挨拶に来てくれて、そして私も真央の両親へ挨拶にいった。兄まで帰省して、父までもが’姫岡真央’という俳優を知っているのは驚きだった。

真央はばっちりと両親や兄へ好印象を与える(演技をしていた…。こういう時俳優っていうのは便利な仕事だと思う)

そして新しく用意してくれたマンションは、私の職場ととても近かった。逆に真央の仕事が通いずらいのでは?と思う程。大変なのは坂上さんだと思うが…。

全ては私を優先した新しい住居は、前の時と同じ高級マンションではあった。近くの介護施設に管理栄養士として就職が決まっている私は、少しでも家賃の負担をと思ったが、その話し合いは揉めにもめた。

結局は食費を私が負担するという事で話は丸く収まったが、真央はそれにも不満そうではあった。


寮は夏にリフォーム工事が入ると言う。

アルバイトを辞めるのはとても名残惜しい。瑠璃さんや豊さんも私のご飯を美味しいと言ってくれた。

だから仕事休みの週末は作りに行ってあげようと思う。やっぱり私は自分の作ったご飯を人に食べて貰うのが好き。喜ぶ顔が好きなのだと思った。