「そうか。俺には相当見劣りするが、まあまあかっこいい奴だったじゃないか。しかも法学部なんだろう?将来有望だ。奇跡的にお前に好意があるようだしな。
それに……俺はお前が選んだ道は止める事が出来ない。
お前のような奴を選ぶ奇特な男なんて早々居ないから、それは逃さないようにしておけ…」
「雄太にはきちんと話してきた。もう会えないって。雄太が私に好意があるとして、私はそれに応えられないって。
私が選ぶ道の先には真央との未来しかない。
もう遅いかもしれないけれど、私普通の恋愛は出来なくても真央と離れる以上に悲しい事なんてこの世界にないって思ったの。
私はあんたと喧嘩したり、でも笑ったり、それが普通じゃなくたって行きつく未来には絶対にあんたが居て欲しい。
私の事を沢山思ってくれてるの、長岡会長から聞いた…。私だってあんたが仕事を頑張ってる姿を見るのが支えになっている。そしてそんなあんたの支えになりたいと思ってるの。この先もずっと」
そこまで言ったら涙が溢れて来た。
フンッと鼻を鳴らして、くるりと背中を向けてしまった。
もう遅すぎるって分かってる。
「伝えたい事はそれだけです…。しつこくってごめんね?
長岡会長から寮は存続するって聞いた。真央が言ってくれたんだよね、ありがとう。
あの、私は会えなくなるけれどずっとテレビの前で真央を応援してる。大丈夫。真央なら芸能界で絶対にやっていける。
じゃあ、さようなら」
そう言って背中を向けて家を出て行こうとした時――背中に温かい温もりが伝う。後ろから両手で強く私の体を抱きしめて、頭の上に顎を乗せてフーっと小さく息を吐く。
「どうしてお前はそうなんだ」
「真央?」



