「それは笑いごとじゃないけど…。事務所の人から怒られちゃったしさ~……
はぁ~…近頃は大学にも来ずらいよ~…」
人の視線が突き刺さる程注目された経験は人生で一度もナシ。
それ程目立つタイプではなかった私。…いや昔から悪目立ちはする方だったけれど、なんていってもキツイ顔立ちのせいであらぬ噂を立てられる事はよくあった。
中身のヘタレっぷりを知られてしまえば、誤解は解けていったけれど…。
けれど大学で真っ赤な薔薇を手にし現れた真央と、授業を抜け出した私が抱き合っていたのを複数の学生が目撃していて
一躍時の人となってしまった。
「なーんだ、ブスじゃん。付き合ってるとか嘘じゃん?」
「ぷっ。止めなよ。聞こえちゃうよ?」
すれ違いざま、また悪口を言われる。
聞こえちゃうよ?ってばっちり聞こえてますがな…。
ブスなのは事実かもしれない。けれど付き合っているのも紛れもなき事実。
複雑な感情だった。
私をどう評価するなんて、どうでも良い話だったが…私は私の存在のせいで真央の仕事の邪魔だけはしたくなかった。
そして姫岡真央は俳優で芸能人。もしかしたらこの大学にだってファンが居て、私の存在を知ってショックを受けている女の子たちがいるかもしれない。
それを考えるとどうしても心苦しくなってしまう。
「何あれ!ムカつくな!」
「りっちゃん良いって…仕方がないよ」
「仕方がなくないよ。お前らのがブスだっつの!僻んでんじゃねぇよ!」
「あの子達の気持ちも分かるし…」
「静綺……」



