【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜


その言葉に彼は悲しそうに顔を歪ませた。そして泣きそうに目を細めて、そっと私の頬へ手をかざす。

温かい温もりは、久しぶりに感じるものだった。

「仕方がねぇよ。俺はお前には普通の事をさせてあげられない部分も沢山ある。認めたくはないが、それが現実だ。
俺は…昔から普通であろうとすればするほど自分が普通ではない事を突き付けられていた。
だからお前が俺と付き合ってても出来る事は制限させるし、普通の男ならばしてやれる事が出来ない事に引け目を感じていた。
だからお前と会わない間はずっと考えていた。お前は普通の恋愛をして普通に幸せになれる奴だし、俺となんか付き合ってる必要ないんじゃないかって…」

会わない時間。ただ怒っているだけではなかった。私ただただ真央を怒らせて、その怒りを鎮める方法しか考えていなかった気がする。いつだって自分よがりだった。

あなたはいつだって私を優先的に考えてくれる優しい人で、誰よりも自分の置かれている立場に苦しんでいた。

頬に触れた手を強く握りしめる。

そんな泣きそうな顔をさせる自分が情けなくって、真央が繊細な心を持っているのはずっと知っていたのに。

「今日雄太と会ってきた」

’雄太’と名前を出すと、より一層悲しい顔をした気がする。 けれどそこにはただただ悲しみがあるだけで、怒りは感じられなかった。

落ち着いた口調で、言ったのだ。