【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜


電気が点けられていて、リビングの大きな窓から見た空はすっかりと陽が落ちていた。
そして目の前には、心配そうに眉を下げた真央の姿。……久しぶりに見るその姿があった。

「え?」

「何やってんだ。こんな所で寝ると風邪をひく。寝るならばベッドで寝ればいいだろう」

想像していたよりもずっと優しい声色だった。
けれどそれよりも私を驚かせたのは、久しぶりに会った真央の髪型と髪色が変わっていた事だ。

「え?何で髪型変わってんの?髪色も…」

「そこかよッ!」

少し長めのサラサラの蜂蜜みたいな茶色の髪から、真っ黒の前髪が無造作にかきあげられている短髪になっていた。

「久しぶりに会ったのに1番に言う事がそれとかないわー…」

不機嫌そうな顔は相変わらず。仏頂面のまま、口を曲げる。

長めの茶髪も似合っていたけれど、黒髪の短髪もよく似合っている。てか、この人に似合わない髪型なんてないんじゃないだろうか。思わず本音が口から零れ落ちた。

「えぇー?かっこいいんだけどッ」

その言葉に眼を丸めたかと思えば、直ぐに真っ赤になる。

でも口から溢れた言葉は本音だった。ぷいっと顔を逸らせると「当たり前だろう」といつもの調子で言った。

「今度の映画の為の役作りだ。ドラマもクランクアップしたしな。この世界で俺に似合わない髪型は無い。」

「うんうん、好青年って感じでよく似合ってるよ。
真央は綺麗な顔してるから茶髪だと中性的に見えるけれど、黒髪だと大人っぽくなって男らしくなるね?
すっごくかっこいいッ!」