【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜


「いいや!客観的に見たら雄太の方が素敵な人だと思うよ。
あの人、人の話もろくに聞かなくって、怒ったら話のひとつもする事も許さない位粘着深いんだよもん。
…でも私は…あの人の悪い所も全部好きなの。一緒に居たいと思える人と人生で初めて出会った気がするから…」

「何か結局惚気られてるだけのような気がするんだけど?」

茶化すように笑った雄太は、小学校の頃と同じような笑顔を見せた。成長して大人になったって変わらない所もきっとあるよね。

「雄太の夢はすごく素敵だから、これからも陰ながらに応援してる」

「ありがとう。…棚橋も頑張ってな?」

カフェで20分程度話して雄太とは別れた。もしかしたらまた花乃さんに探偵を雇われているかもしれない。

けれど、何を言われてももう平気だ。

今日雄太を誘ったのも、会いに来たのも自分自身でそこには明確な目的があった。けじめをつける為。自分の意思をハッキリと相手へ表示する為。

大切な事なのに出来なかった。その結果、大切な人を傷つける羽目になった。
傷つけたくないと思えば思う程、傷つけた。

雄太と別れてから真央のマンションへ向かった。
もしかしたら花乃さんが居るかもしれない。そこには私の見たくない現実があるかもしれない。
それでもいい。この気持ちを伝えずに後悔するよりは、傷つくより何倍もマシだと思えたから。

夏の終わり。あの日私は真央に想いを告げずに寮を出た。あの時も伝えたい言葉が沢山あったのに、それを伝えきれずに。

けれど真央は私の大学までやって来てくれた。あの日とは逆に今度は私が会いに行くから。
伝えきれない気持ちをちゃんと言葉にしてあなたに届けたいと思うから――。