普通の人のようなデートは難しいかもしれない。けれどこうやって一緒にいれる時間を少しでも毎日持てる事は、やっぱり幸せなのだ。
グリュッグエンターテイメントの寮があって良かった。ここには気心の許せる瑠璃さんや豊さんも居て、スタッフである山之内さんや坂上さんもいる。少なくともここは安全で、安心だとこの時までは思っていた。
水面下でとある話が進められているとも気が付かずに、私は幸せに浮かれ切っていたのである。
―――――
「ふ~…最近寒くなったよねぇ」
「本当。この間まで秋だったかと思えばもう冬になるんだもんねぇ」
大学の校内を一緒に歩くのは親友の星月 律ことりっちゃんだ。私とは小学校の頃からの幼馴染で、真央との恋の相談をしていたのも彼女だった。
それ程信頼の置ける親友で、その他にも大学内では亜紀と麻美という仲良し4人組で常に行動を共にしている。それでも幼い頃からずっと一緒のりっちゃんは、特別だった。
「でもさぁー……卒論とか色々あってそれまでは忙しいよねぇ」
「静綺はバイトもあるしねー。まぁつってもバイトと行っても寮から通ってるんですものねぇ~、しかも彼氏と一緒に暮らしているし」
まるでからかうようにニヤニヤと笑い私の顔を覗き込む。
「暮らしてるって言っても…皆と一緒だし」
「でも週末は姫岡さんの用意してる都内のタワーマンションで過ごすんでしょー?
キャー…羨ましい…。姫岡さんとタワーマンションって似合いすぎるのよぉッ!
それにそれに週刊誌にまで出ちゃってまるで有名人じゃない!」



