「とはいえこの寮も相当老朽化が進んできましたので、今年中にはリフォームの工事に入ろうとは思ってます。
今日はその話も詳しく山之内さんとしようと思って伺いました」
山之内さんの方へ優し気な視線を移すと、山之内さんはぺこりと頭を下げた。
「わざわざありがとうございます」
「真央から連絡を貰った時は驚きました。まさか僕の居ない間にそんな話が進んでいるとは
社長の方には僕の想いはきちんと伝え、納得してもらいました。あいつは仕事が出来る人間ではあるのですが、何分頭が固くて仕方がない。
我が息子ながら申し訳なく思っています」
「そ、そんな…。けれど会長が戻ってこられて安心しました」
「山之内さん、いつも苦労をかけているね。
けれど真央も復帰をしたようで、主演している連続ドラマも楽しく見ている。
ちょっとあの頃より演技が上手くなったんじゃないか?真央は昔から歳を重ねる程に良い演技が出来るタイプの俳優だとは思っていたが…最近は更に良い!」
「会長にそう言って貰えてあの子も喜んでいると思います」
「はっはっはっ、帰国してから真央に会ってそれを伝えたら、当然だ誰だと思っている?と返されてしまったよ。
全くあの子位だ、僕にあんな態度を取る所属タレントなんて、何と言うか可愛いよ」
「あの子ったら…」
「まぁそれが真央の照れ隠しって言うのは分かっているがね」
真央の話をする時の長岡会長はとても穏やかな顔をしていたと思う。
確か小さい頃からこの寮に一緒に暮らしていて、まるでお父さん代わりに可愛がってもらったと言っていた。
忙しくて滅多に帰る事の出来なかった幼少期。その時間を長く過ごした彼にとって真央は本当の息子同然なのだろう。



