Act 11  あなたの居ない未来はない。




卒論を提出して、その発表も終わった。

大学卒業の単位も取り終えていて、後は卒業を待つのみ。学生最後の春休みが訪れる。4月からは両親の伝手で既にとある施設へ就職が決まっていた。

寮に真央が戻る事はなかった。そして花乃さんが真央のマンションへ入って行ったあの日から、彼へ連絡を取るのは止めた。

本来であるのならば、親に挨拶に行って4月からは真央と本格的に暮らす予定だった。そして寮は取り壊される事もなく、何も変わることなく楽しく過ごしていく予定だったのに

どこで一体何を間違えてしまったのだろう。

いつの間にか寒さを感じる日が少なくなっていて、木々が青々と茂り始めて春の訪れを感じさせた。

爽やかな春の匂いがどこかからした。

春の所為か、道行く人々どこか希望に満ち溢れていて皆が幸せそうに見えた。

スーパーでぼんやりとお肉と見つめ合う。自分以外の家族連れカップルその全てが平和そうに見えて、何もかもが嫌になってしまう今日この頃。

「ひき肉安いな。今日はハンバーグにしようっと…」

独り言を呟きながらひき肉を2パック籠に詰めて、適当に野菜を買う。

3月に入り真央たちの主演のドラマは間もなく最終回を迎える。それに伴いキャスト全員がクランクアップしたと聞いたのは、昴さんと坂上さんからだった。

真央からの報告は一切無し。

最終回まで雑誌の取材や番宣が引っ切り無しにスケジュールに入っており、それを終えれば3月の終わりから真央は映画の撮影で暫くの間イタリアへ行くと言う。