「あなたは、邪魔なの。
本当に真央の事を大切に想うのならば、別れるべきなのよ」

その場で立ち尽くしたまま動けない。何も言い返せなくって、目の縁が熱くなっていくのを感じる。

マンションに入って行く、長い黒髪をただ見つめる事しか出来なくって…私はやっぱり意気地なしだ。

もう私達は本当に駄目かもしれない。
一般人である私が花乃さんのように真央を100パーセント理解してあげる事は難しい。

それと同時に、芸能人と付き合ってる私の気持ちを真央もきっと理解は出来ない。
理解出来ない世界に居る者同士の恋愛は、花乃さんの言う通り難しいのだ。

真央を疲れさせたくない。傷つけたくない。 私はこの時自分の気持ちとは裏腹な未来を選び取ろうとしていた。

情けなくってかっこ悪い自分に最後に出来た事。

真央を大切に想うからこそ、選び取りたくない’別れ’という道を選ばなくてはいけないのかもしれない。 それが真央の為だって、この時は本気で思っていた。

まだぶつかりあってもいなかったのに、あの手を離そうとしたのは誰でもない自分自身だ。