「それにあなたの存在が真央を疲れさせてしまう事もあるって言う事よ?
真央の事を考えるのならば、私の言う通りあなたは真央とは別れるべきだわ。
真央は映画も決まって今が大切な時期なの。そんな大切な時期にあなたが居て良い影響になるとは私は思えないけれど?」

ずばずばと言いたい事をハッキリと言う美しい人を前に、何も言えずに立ち尽くすのみだった。

私が、真央を疲れさせる?…確かに私は真央を疲れさせているかもしれない。真央は私の為だったら何でもしてくれようとして、きっと外になんて行きたくないだろうにデートに連れて行ってくれた。

そういう優しさに甘えすぎていたかもしれない。結果、彼を傷つけた。

花乃さんは口元を私の耳の側まで持ってきて呟く。そこからは大人の女性の香水の甘い香りが香った。

「真央の事なら私に任せて?
私ならばあなたと違って、真央を支えてあげる事が出来る。
真央がお望みならば、あなたの代わりに身も心も癒してあげる事が出来る。
だって私達ってそういう関係でビジネスパートナーだったから、何も出来ないあなたよりかはよっぽど役に立つと思うけど?」

そしてさっと横を通り抜けて、こつこつとヒールを鳴らしてマンション内へ入って行こうとする。

その場所には、花乃さんの甘い残り香だけが取り残されたまま
くるりとこちらを振り返ると、目を細めて見たことのないような厳しい表情をこちらへ向けた。