りっちゃんと隼人くんはすっかりふたりきりの世界だ。
そして私は女だと言うのにサラダの取り分けさえ出来ない気の利かなさ。自分ながらうんざりしてしまう女子力低下の一途をたどる。
「え~?普通じゃん。でも面倒見は良いってよく言われるけど」
「だよね~?女の私よりよっぽど面倒見良いし」
「棚橋はそれでいいじゃん?それより食べな。ここの居酒屋さん安い割に料理も結構旨いよ。」
何か…懐かしい感じが。
大学に入ってから、よく合コンや飲み会に行っていた。そこで彼氏が出来た経験はないが…。
でも大学生らしいこの雰囲気は元々嫌いではなかった。こんな感覚は久しぶりで、すっかり忘れてしまっていたが。
こういう楽し気な雰囲気は居るだけで気持ちが華やいで、全然彼氏は出来なかったけれどあの頃はいつも期待してた。
いつか運命の王子様と出会えると。
烏龍茶でも同世代の友達とワイワイ過ごしているのは雰囲気だけでも楽しかった。
その時バックの中に入れておいた携帯が鳴る。
『おい、迎えに行こうか?仕事結構早く終わった』
ラインは真央からだった。お酒も飲んでいないのに全身から汗がドバっと溢れ出すのを感じる。慌てて返信をする、と。
『大丈夫だよ!帰れる!お仕事お疲れ様』
『本当に大丈夫か?卒論もしてきたんだろ、疲れてるんじゃないか?』
私より撮影を終えた真央の方がよっぽど疲れている事だろう。それなのに優しい気遣いに胸がずきりと痛む。
もう嘘をつくのはほんっとうに止めよう。それが誰かの為であったとしても。
何か悲しい気持ちになってきた。真央はこんなに優しいのに、私一体何をやってるんだろう。
はぁーと大きなため息が漏れる。



