「もしもし?」
「あ!今大丈夫?明けましておめでとう!」
電話からは若い男の声。そっと耳から離し、着信相手の名前を見て見ると雄太だった。
げぇ!!名前も見ずにうっかりと出ちゃったよ…。
「あ、明けましておめでとうございます」
「何で敬語なんだよ~…。棚橋あんまりラインも返信してくれないからついつい電話しちゃった」
「あはは~…ちょっと忙しくって」
真央と居る時に誰かと連絡を取っていると、彼の視線がぎろりと突き刺さる。
ましてや男と連絡を取っているのだと知ったらあの男の事だ。怒り狂うに違いない。
「午後からは授業入ってるの?」
「んーん、今日は入ってないよ。てゆーか単位殆ど取っちゃってるし、卒論を終わらせるくらい」
「そうなんだ。実は今棚橋の大学の近くに来てるんだけど」
「え?!」
雄太の通う大学と私の大学は結構近い。何故か嫌な予感がした。
「俺も午後からは授業がないんだ。良かったらちょっとどっか行かない?」
「それは……卒論の調べ物もあるし…」
「ちょっとくらい息抜きも必要だって。あ、大学着いたよ」
雄太ってこんな強引な人だっけ?小学校時代の思い出しかないから、知らなかった。
「でも今日はりっちゃんも学校には来てないみたいだし」
「何で星月?俺棚橋に会いに来たんだよ?」
だからそれが非常に気まずいのです…!
まだここにりっちゃんが居てくれたら雄太に会う理由も出来る。けれど現在りっちゃんは大学には居ない。
そしてわざわざ大学まで訪ねて来てくれた同級生を、無理やり帰すほど気も強くなかった。



