…全部想像をしてみただけで、騒ぎになるのは目に見えていた。

真央としたい事、一緒に見たい物は沢山あった。けれど彼の職業的にそれが難しい事も自覚はしている。

やっぱり普通じゃない。そう言えば彼を苦しめる事は知っている。特別扱いされるのを本当は嫌う。いつだって普通でいたかった。けれど、幼い頃から芸能活動をしてきた彼にそれは許されない。

私のような一般人では考えられない悩みが沢山あるはずだ。

「キャー!あれって姫岡真央じゃない?!」
「え?!姫岡真央がいるって?!」
「撮影かなんか?」
「女の人と一緒だったよ?」

嫌な予感は的中。

おっきなツリーがあるとテレビで特集がやって来た素敵なイルミネーションは年末も相まって物凄い人混みで、ただでさえ真央が見つかるのには時間がかからなかった。

彼なりに変装はしたつもりだっただろう。けれど隠し切れない芸能人オーラがある。オーラの全くない私には羨ましい限りだけど、人に取り囲まれて真央はうんざりとしながら怒りを露わにした。

「隣にいる女の人って彼女?」
「まさか姫岡真央の彼女があんな普通な訳ないじゃん。マネージャーかなんかでしょう?」

世間の皆さまは傷つく事をさり気なく言ってくれる。別にいいけどさ。
私と真央が並んで立ってカップルには決して見えまい。