「何だ?!気に入らなかったのか?!」
「ちがくて!」
「ピンクが嫌だったのか?!」
「そうでもなくって!」
「これ、すっごく高いバックだよね?!」
私の発言に眼を丸くする。まるでそれが何か?と言わんばかりだ。
「何だ値段の事か、それなら気にする必要はない。瑠璃さんに訊いたらここのブランドのバックならば女の子で嬉しくない子はいないと言っていた」
「そういう問題でもなくって!」
瑠璃さんめ。余計な事を言ったな。
ここのブランドのバックなぞ、大学生の私には手の出る値段ではない。つーか普通の大学生カップルでも中々プレゼントしあったりしない値段だ。
20万なんて軽く超えてしまうのではないだろうか。プレゼントは値段ではないと言うけれど、いくらなんでもこれはやり過ぎだ。
「何だお前、ここのブランド嫌いだったか?」
「嫌いじゃないけれど、こんな高級な物貰った事ないし」
「別にいいだろ。その位の値段のバックのひとつやふたつ持ってたって」
こいつの金銭感覚が狂っているのはもう理解していた。お金に執着心がないのも、お金で苦労がした事がないから。
だって小さい頃から子役として活躍してきて、大人になっても人気俳優で給料は嫌って程入って来るのであろう。本人の意思とは反して。
「そんなに俺のプレゼントが気に食わないか…。
それならば!もうひとつの方を見てくれ!」
ややご機嫌を損ねたようで、ぶつぶつと呟く。もうひとつ手渡された小さな箱にも嫌な予感でいっぱいだ。
ごくりと生唾を呑み込んで、もうひとつの箱の赤いリボンに手を掛ける。



