台本をテーブルの上に置いて立ち上がったと思ったら、真央は使っていない部屋の中に入って行く。
直ぐに部屋から出て来たかと思えば、その両手には大きな四角い箱がふたつ。赤いリボンが結ばれている。
照れくさそうに少しだけ視線を落としながら、私の前へと差し出す。…もしかして、これって。
常日頃欲しい物はないかと訊かれる。けれどその問いには’何もない’と答えてきた。物欲がない訳じゃないけれど、真央が一緒に居てくれる夢のような生活以外に欲しい物は余り思い浮かばないのが正直な所。
これ以上望むものはない。そう思ってたのに。
「クリスマスプレゼントだ。遅くなって申し訳ない。」
「えぇ?!いらないって言ったじゃん!」
「お前馬鹿か?俺が貰いっぱなしでいられるか。
大体お前はいつも何が欲しいと聞いてもいらないと言うばかりで、考えるこっちの身にもなれ」
「でも何でふたつ?」
「クリスマスプレゼントと、日頃お世話になってる感謝つーやつだ」
「そんなの…いいのに」
「うるさいな。せっかく買ってきたんだ。素直に受け取っておけ!」
そう言って無理やり渡されるプレゼント。本人は相当照れ臭かったのか、その視線は挙動不審気味で右へ左へと動く。
大きい箱の方から赤いリボンを解くと嫌な予感がした。
ピンク色の箱には見覚えがある。クリスマス仕様にラッピングされているが…中からは淡いピンク色の可愛らしいバック。失礼かもしれないが思わずドン引きである。
箱を開けて一瞬硬直して、再びぱたりと閉める。それを見て真央は明らかにショックを受けた表情をした。



