「それより会長さんはまだ帰って来ないんですか?!
寮はどうなっちゃうんでしょう」
「会長とはぱったりと連絡が取れなくなってるんだ。
元々気まぐれな人で、会長になってからは何か月も外国に滞在して、現地のショーを観たりするのが好きな人だから。
…このままいけば寮は取り壊されちゃうだろうね…。山之内さんも説得しているようだけど、難しいかな…」
「そう、ですか…」
「真央くんは思い出の詰まっている寮が無くなるのは勿論嫌なんだろうけど
昴くんや瑠璃さんの身の振り方の事も考えているんだと思うよ。あの場所は事務所で居場所のない人たちの場所でもあるからね。」
「真央はなんだかんだいって優しい人だから。私も大学を卒業したら寮には暮らせなくなるかもしれない。
でも…寮がなくなるのは嫌です」
もしも寮を取り壊すと決めたのが、今回の真央と私の熱愛報道のせいだったとしたら…。
それは申し訳なさすぎる。
どうしたらいいのか、分からない。
けれど目の前で演技を繰り広げている人が、事務所に必要ない人だとは思えない。
それから大学のとても短い冬休みが始まる。夏休みと違ってあっという間に過ぎゆく冬休みに、卒論の準備で中々忙しい。
実家に顔を出すたびに「真央くんは?!」と母に訊かれる。父や兄にも連絡をしたらしく、絶対に余計な事を言ったに違いない。
父から連絡は無かったが、兄からは「お前芸能人と付き合ってんの?」と連絡が一度だけ着た。



