それは勿論昴さんや他の出演者も同じだったけれど、ああ…何故だろう。私はいつだって彼の上にしかスポットライトが見えないのだ。
スポットライトを浴びるのに選ばれた人間。
口角がニッと上がり、目つきが変わったかと思えば、その薄い唇から紡がれるハスキーボイスが現場に響く。
どうしたって目を惹かれて、どうしたって心を掴まれる。そんな存在。
ころころと変わる表情から目が離せなくなる。テレビで見るよりずっと迫力がある。
昴さんとの掛け合いもばっちりだった。
「いいなぁー…」
ぽつりと零れ落ちた言葉に、隣に居た坂上さんは眼を瞬かせる。
「いえ、坂上さんはマネージャーとして真央の演技を毎日見れていいなぁって思いまして」
その言葉に坂上さんはにこりと優しい顔をして笑った。
「それなら静綺ちゃんグリュッグのマネージャーになっちゃえば?
そしたら真央くんも喜びそうだ。タレントの心身の健康を守るのも僕たちの仕事だからね」
「あの社長が許す訳ないです。それにマネージメントに関しては私は全く持って素人ですし、安易に手を出すべきではありません。
それに私、やっぱり寮で働いてみて、真央や坂上さんたち皆が私の料理を食べてくれて元気になるの見るのすごい好きなんです。
だから自分にとってはそれが天職だなって思ってます。
料理を作るのなら真央の役にも立てると思うし」
私の言葉にやっぱり坂上さんは優しい笑みを浮かべるから、その道は間違ってはいないのだと思う。
真央の側に居れるのはきっと幸せ。でも自分の決めた道を進む事を曲げるのは、真央も喜ばないと思う。



