「あはは~そう?結構撮影は和やかにやってるよ~。今回はスタッフさんも良い人たちばかりだし、共演者も親しみやすい。
真央の人見知りも段々ととれてきて上手くやってると思うよ」
「本当に昴さんにはお世話をかけます」
私の言葉に「保護者みたいだね」と昴さんは笑った。
撮影現場で上手くやっている事は真央の顔を見れば一目瞭然ではあった。それは昴さんと共演のお陰だったかもしれないが。
真央は仕事に対してとても真面目だ。けれど不器用な性格が故に周りに勘違いされる事も多い。
だから上手くやっていると聞いて安心した。それにスタッフや共演者と話している感じも、遠くから見ていても心配はなさそう。
そして辺りを見回しても今日は花乃さんが居ない事に安心していた。 真央や坂上さんから今日は来ないよと何度も聞いていたけれど。
「おい、昴!何を喋っている!静綺になれなれしく話を掛けるな!」
「え~?でもこの間局内で会ったよねぇ?俺ら」
「局内だと?!」
ひぇ!昴さん余計な事を!
あれは真央の相談をしに、岬さんに呼ばれたのだ。そこにたまたま昴さんも居ただけで、これじゃあ誤解されるじゃないか。
「お前、どういう事だ?!何をコソコソ昴と会ってやがる!
せっかく俺が撮影現場に呼んだと言うのに!」
「それは誤解だって…」
「気分が悪い。昴リハが始まる。早くしろ」
そう言って昴さんの腕を引っ張って、カメラの前へ走って行く。ベッと舌を出して小生意気な顔をしてこちらへ視線を送る。
しかしリハが始まると人が変わったかのように役に入り込んでいく。



