「そうは言っても世間の声は冷たいでしょ？真央くん程の売れっ子となると次元が違う問題だよ。
本当に静綺ちゃんを想うならもっと行動には慎重になるべきだと思うけどねぇ。だって静綺ちゃんは一般人なんだし
これが有名タレントとかだったら事務所とかが守ってくれたかもしれないけどさぁ…」
グリュッグエンターテイメントは様々なタレントが所属する。所謂大手芸能プロダクションだ。
そして私がアルバイトをしているこの寮は今はほぼ誰も住んでいない中々に不気味な建物で、新しく新設された寮があるというのにここに数人住んでいる変わり者がいる。
グラビアアイドルの西山 瑠璃さんとお笑い芸人の山際 豊さんもそのうちの２人である。
そしてここには真央と真央のマネージャー坂上さんとグリュッグエンターテイメントのチーフマネージャーである山之内さんが住んでいる。
先日まで昴さんも少しの間だけ住んでいた。
「そこはもうッ…愛とかでなんとかなるものよッ」
「愛って……愛でどうともならない事もあると思うけど？」
「もーッ豊はぁー…現実主義者なんだからぁー…」
「何にしても真央くんと静綺ちゃんが付き合ってるのは静綺ちゃんの為に内緒にすべきだと思うけどね」
テーブルを挟んで、ふたりの言い合いが続く。
しかし多分…豊さんの言う通りなのだ。
あの時はふたりで盛り上がって考え無しだったと思う。真央は人に影響力を与える職業であるのだから、行動は慎むべきだった。
彼にだって沢山のファンがいるのだから、そしてそのファンがいて成り立つ仕事であって…私のしている事は誰かを傷つける行為。…それを思うと胸がちくりと痛む。
