「棚橋って彼氏いるの」

「いるよ」

絶賛喧嘩中だけど。

「えー…マジかー…」

その答えに雄太はあからさまな落胆を見せた。

「え?!そんなに私って彼氏いなさそう?!…確かにモテないけども。今の彼氏が私と付き合ってくれてるのも奇跡のような話だけども!」

「そういう意味じゃないって~相変わらず棚橋は面白いなー。
棚橋がモテない訳ないじゃん。昔っから可愛かったし、彼氏はいるかなーとは思ってたけどやっぱりいるんだ」

褒められている?いや、確かに雄太は小学校の頃私が好きだと噂は聞いた事があった。だから初恋フィルターがかかっているに違いない。

「雄太の方こそモテるでしょう?」

「俺なんて全然だよ。この間も彼女に振られたばっかりだしさー」

「ふぇー、雄太でも振られる事あるんだ」

「そりゃあるって。てかやっぱり棚橋彼氏いるんだー。あー残念……」

その同窓会で久しぶりに再会した雄太と話はよく盛り上がって、お酒が入っているとの事もあって

何故か番号交換をする羽目になった。軽はずみな事をしたと思う。まさかこれが後に大事件を引き起こすとも知らずに。

事もあろうことか、私はお酒の力を借りて真央が芸能人だという事を隠し、彼氏の愚痴話を始めてしまったのである。最低な行為である。

喧嘩していたとはいえ、異性に彼氏の愚痴を言う女は決まって地雷だ。その地雷女に自分が成り下がっていた事にも気が付かずに、日ごろ溜まった鬱憤を吐き出しまくった。

…余り何を話したかは、記憶は定かではない。


携帯に真央から連絡が入っているのに気づいたのは、朝起きてからだった。
『マンションの方に行ってるから。同窓会が終わったらおいで』

そんな連絡にも気が付かずに、同窓会で泥酔してしまった私はりっちゃんの家へ運び込まれる事になってしまったのだ。