泣いて、凪いで、泣かないで。

「あっ...」


気づいた時にはもう、私の目の前の景色は変わっていた。

ボタボタボタボタと激しい雨が傘を打ち付ける。


「オレ、やっぱり、諦めない」

「えっ?」

「それだけだよ。じゃあ、またね」


暖かい手のひらが私の頭の上に乗り、私の胸がドクンと激しく鳴った。

雨の音よりも大きく感じて、爽くんに聞こえていなかったかなと心配になる。

でも、その心配は杞憂だったようで、爽くんは傘をくるくる回しながら帰って行った。

心臓に悪いことばかりだ。

言葉も、

仕草も、

行動も。

1つ1つが私の心臓の誤作動の種。

こんなんで心臓持つだろうか。

なんて思いながら、お店に戻る。