泣いて、凪いで、泣かないで。

「おぉ、着いた着いた。お~い、おじさ~ん」


見た目は派手なのに、わりと高めの緩い声を出すから、そのギャップに萌えてしまう女子は多いらしい。

ガラス窓越しにおじさんが手をブンブン振る。

雨だというのに、常連客のおじいさんが今日も来ていてこちらを見て目を丸くしていた。


「いらっしゃい、爽くん。それに、美凪ちゃんも」

「今日はバイトの日ですよ」

「あっ、そっか。じゃあ、よろしくね」

「はい」