泣いて、凪いで、泣かないで。

そう。

この人と出会ったのは、1年前の春。

同じクラスになり、初めて喋ったのが、2日目の掃除の時だった。

掃除の班を勝手に割り振られ、しーちゃんともゆっととも離れ、1人寂しくホウキではいてせっせと床の水ぶきをしているところに、彼がやって来た。


「あのさ、名前、なんていうの?」

「えっ......」


私は思わず、目を激しくパチパチさせてしまった。

だって、目の前にいたのは、ドラマでしか見たことがない金髪にピアスの危険人物だったから。


「ねぇ、聞いてる?」

「あっ、はい。聞いてます。聞いてますとも」


私がそう言うと、彼はくすっと笑った。

その笑顔が髪の色よりも眩しくて、それとの相乗効果でさらに眩しく、キラキラして見えて私は今でもその日のことを忘れられない。


「あの...」

「面白いねぇ、君」

「はぁ、そうでしょうか?」

「うん、面白いよ。そんな君に特別に、オレの名前、教えてあげる。オレの名前は......」


―――波田野爽(はたのそう)。

―――サーフィンをやってる。

彼はそう言ったんだ。