泣いて、凪いで、泣かないで。

「ゆっと、私帰るね」


感慨にふけっていると、美凪が帰り支度を始めた。


「ちょっと待て」

「えっ?」


俺は重要なものを忘れていたのだ。

ついさっき、冷蔵庫が目に入り、記憶が甦ったんだ。

ゴソゴソと冷蔵庫を漁り出す。


「これ。買ってきたの忘れてたんだよ。美凪も好きだよな、ここのケーキ」


美凪が口を奇妙に動かす。


「なんだよ、その顔」

「なんでもないよ」


なんでもないが口癖。

これが1番厄介だ。


「なんでもなくねえだろ。言いたいことあんならはっきり言えよ」


美凪はふふっと笑ってから言葉を放った。


「ゆっとはやっぱりシスコンだ」