泣いて、凪いで、泣かないで。

「ねぇ、おにい」

「お、どうした?」


誕生日席に座り、俺達の話をニタニタ笑いながら聞いていた結月がようやく口を開いた。


「なんだっけ?ん~と...、あっ、これこれ。ゴールデンウィーク明けにここでハイキングするとかって先生言ってたけど、ここどこ?」


結月が見せてきたのは、"ハイキングレクリエーション"と書かれたプリントだった。


「うわぁ、懐かしい!」

「おれたちも行ったよな、1年の時。」

「あぁ。金平(かなだいら)自然公園とかってところだ。この公園に辿り着くまでに40分くらい歩くんだよな」

「そうそう。で、1年の時おれたち皆同じクラスでさ、一緒に登ったんだよな。でも、おれは密かに夏綺の隣キープしてた」

「あははは!そうなんだ!煌人先輩らしいっ!」


懐かしい話だ。

もうあれから2年も経つのか。


「しーはね、なんかその時、すっごく調子が良くてねぇ、なっちゃんの手を引いてめっちゃ早歩きしちゃって。で、煌人くんがそれを追ってくる、みたいな感じでしたねぇ...」

「でした、でした。でさ、途中ででっかい虫見つけて......」