泣いて、凪いで、泣かないで。

「2人はさ、ゴールデンウィークどっか行くの?」


煌人が興味津々といった顔で身を乗り出してきた。


「部活あるだろ?」

「あるけど、最終日は午前で終わるじゃん。だから、その後でもどっか行くのかなって思ってさ。あ、ちなみにおれたちは午後から映画見に行くぜ。だよな、夏綺?」


まださくらんぼみたいな頬のままの夏綺はうつむきがちに言葉を紡いだ。


「うん。ワタシすごく見たい映画あってね。それがゴールデンウィーク中に終わるから見たいなぁって思って、煌人に言ったら一緒に行こうって」

「へぇ、いいなぁ!ねぇ、しーたちも行こうよ、映画!」


やっぱりそう来たな。

人のものが羨ましくなるのは、俺もちょっと分かる。


「分かった。元からどっかには行きたいなって思ってたからちょうどいい。映画、見に行こう」

「やったぁ!2人でお出かけ嬉しいなぁ!春休みも部活と講習で終わっちゃったからねぇ。久しぶりの遠出だぁ!」

「しーちゃん、遠出ではないと思うよ。映画館、市内だし」


夏綺が冷静に正解を言う。


「でも、いっつも家と学校の中間地点のお店ばっかりだから、駅前に行けるだけでも遠出だよ!」

「まぁ、そうねぇ...」

「汐衣愛ちゃんがそう思うんなら、それでいいよ。楽しいのが1番」

「そうそう。煌人くんの言う通り。楽しいのがいっちばん!」