泣いて、凪いで、泣かないで。

そう言って俺は一旦自分の部屋に戻り、
ふーっと一息ついた。

そして、左足首に着けたままのミサンガを見つめた。

これを着けていれば練習で怪我をしなかったから、

これを着けていればシュートが良く決まるから、

これを着けていれば試合に勝てたから...。

とかなんとか、色んな理由をつけては外すことを拒んで来たものだった。

これを外せば、

これを切ってしまえば、

アイツとの関係も......

アイツとの繋がりも切れてしまうんじゃないかって、

そんなバカなことを考えて、

1人不安になって、

切ることが出来なかった。

穏やかな波が打ち寄せる波打ち際、

白い砂浜の上で、

ほどけないようにと

固く固く結んでくれたこの糸を、

俺はどうしても切れなかった。

俺のせいで、俺の身勝手で傷付いたのに、

俺のためにと自ら俺との糸を切ったアイツを、

俺は罪の意識から、切ることが出来ないんだ。