泣いて、凪いで、泣かないで。

「ごめん汐衣愛ちゃん。早く行こうか」

「うん!よぉし、れっつごぉごぉごぉ!」


随分と威勢の良い列車が出発した。

俺は汐衣愛の隣にピタリと貼り付いた。

だからといって、いつまでも逃れられるわけがない。

煌人からも、

自分の心からも。

俺は話を聞きながらも、自分が話しながらもずっと意識していた。

そして、それは実際に形となって色んなところに現れていた。

それはおかしいって、

間違ってるって、

頭では分かっているのに、

でもなぜか、

なぜだか、

胸にも頭にも確かにその存在はあって、

俺に複雑に混ざったマーブル状の感情を持たせようとする。

その存在は、

あえて言葉にしなくても、

分かっていた。