泣いて、凪いで、泣かないで。

―――ドンドンドンドンドン!


「ちょっと、2人共、遅いよ~!早くしてよ~!」


汐衣愛がドアを思いっきり叩き、大声をあげていた。

俺は慌ててドアを開けると、目の前には仁王立ちをし、顔を真っ赤にした汐衣愛がいた。


「ケーキの予約時間まで後20分だよ~!しかも、みーちゃんもなっちゃんもゆづちゃんも待たせてるんだよ!早く行かなきゃなんだよ!」

「ごめん」


謝ってもまだ俺を睨み続けている。


「もぉ!部長なんだからしっかりしてよぉ!」


汐衣愛は、たまにガチ目に怒るからビックリするんだよな。

だけど、まぁ、単純だから......


「マジでごめん。帰りにカルピス奢るから怒んなって」


好きなもので釣る。

すると、汐衣愛の顔がみるみる綻んできた。


「んじゃあ、今日はソーダで!」


いつの間にかノリノリになっていた。


「了解」


やっぱり汐衣愛は単純だ。

分かりやすく扱いやすい。

一緒にいて楽。

汐衣愛の隣が最も心地良い。

...はずだ。