泣いて、凪いで、泣かないで。

あっという間に日が沈み、下校時刻になった。

俺は最後まで煌人とパス練をしていたから、ロッカー室には俺達しかいない。

俺はいそいそと煌人に近づいて行った。


「おい、煌人」

「なんだよ。練習なら今日はもう勘弁な」


何を勘違いしてるんだか。

もっと良いことに決まっているではないか。


「練習じゃねえよ。パーティーだよ、パーティー。俺の妹が今日入学式だって言ってただろ?だから、俺達で祝ってやろうって話で...」

「あはは!出た出た、シスコン発言!」

「笑うな!つうか、シスコンじゃねえし!」

「シスコンだろ、完全に。どうせまた、誕生日の時みたいにケーキ頼んだんだろ?」

「そ、そうだけど...」


なんで分かっちゃってんだよ、コイツ。


「結人は妹思いの優しいお兄ちゃんだね」

「っるせえ」

「それに......」

「それに、なんだよ?」


俺より3センチくらい背の高い煌人が、ちょっと高いところから視線を流してきた。


「なんでもない」

「今言いかけただろ?!」


問い詰めるものの、淡々と着替える煌人。

仕方ない。

俺もひとまず着替え出す。

汗まみれになったジャージをそれなりに畳んでバッグに入れ、汐衣愛が部員全員に買ってくれたリストバンドを外して腕時計をつける。


「夏綺も来るんだよね?」


煌人が準備を一足先に終え、パイプ椅子に腰かける。

パイプ椅子の乾いた音が無機質なロッカー室に異様にこだます。


「さっき確認したら、結月からメッセージ来てた。夏綺はもう来て準備してくれてるって」


俺がそう言うと、煌人はふ~んと唸り、ぼそぼそと話し出した。


「あと、美凪ちゃんも」

「あぁ、そうだな」


―――キュインッ。


バッグを勢い良く閉め、リュックを背負い、バッグを肩にかけて振り返った。

すると、煌人と目が合った。