泣いて、凪いで、泣かないで。

「お邪魔するぜー」


馴染みの男が、俺の真横を突風のように走っていった。


「おい、煌人!待て!」


煌人は俺と同じバスケ部に所属し、副部長を務めている。

ちなみに、こう見えて俺が部長だ。

煌人は俺の幼なじみの1人である夏綺の恋人だ。

煌人は夏綺に出会って数秒で恋に落ちて、俺と幼なじみだと分かると、ストーカーのように付きまとい、俺から夏綺の個人情報を盗んでいた。

1年のクリスマスに晴れてカップルになったが、俺と汐衣愛が先にくっついたため、俺のことを師匠と呼んでいた時期があった。

そしたら、後輩も真似してしまい、俺のことを師匠と呼ぶようになった。

それを止めろといっても皆なかなか止めなくて、結局俺が部長になるまでずっと呼ばれ続けていた。

ということで、煌人とは今では良きチームメートだが、ここに至るまでは山在り谷在りだったという訳だ。