泣いて、凪いで、泣かないで。

―――キーンコーンカーンコーン...。


「はい、では今日はこの辺で終わりにしまぁす」


おそらく60歳を越えているであろう神林先生の鶴の一声で、クラスメートは教室から一斉にいなくなった。

今日は初日だから午前中で終わり。

つうことで、作戦決行。


「美凪!」

「いったぁ...。もぉ、何すんの?!」


頭に先ほど配布されたばかりの教科書をドシンと乗せてやった。

登頂部が痛くてたまらないって顔をして膨れっ面でこっちを見てくる。

毎年始めは、美凪が瀧内で俺が鳴海だから、出席番号順で席が前後スタート。

これは俺にとって好都合だ。

だから、今日も遠慮なく話を進める。


「今日バイトあるよな?」

「うん」

「つうことは、夕飯も一緒だよな?」

「いっつもそうでしょ」

「なら、今日は夏綺も煌人も呼んで皆で結月の高校入学祝いしよーぜ!」


ポカンとしてる。

めっちゃ良い反応じゃん。


「あのさ、急に言われても困るよ...」

「汐衣愛も来てくれるって言ってたし、用意頼むな!んじゃ、また!」


俺は通り雨のように去り、汐衣愛のところに向かった。