泣いて、凪いで、泣かないで。

結月と俺が話していると、ボートが緩やかに止まった。


「この辺りでいかがでしょうか?」

「ええ。ここにしましょう」


散骨業者の方が見守る中、おばさんが美凪の遺骨を納めた袋を取り出した。

あれが、美凪の......。

結月は目を反らした。

そうなっても無理はない。

この間まで一緒にいた人間の姿が粉になってしまったのだから。

これが、"死"なんだ。

恐怖がじわじわと心を蝕んでいく。

あの日の美凪もこんな恐怖をきっと感じていたはずだ。

なら、俺も共有しよう。

美凪に全てを背負わせてはいけない。

俺も受け止める。

どんな感情も全部、

全部全部受け止める。

そう、決めたのだから。