泣いて、凪いで、泣かないで。

***

3歳の時、俺の家の近所に女の子が引っ越してきた。

母親の背後に隠れ、母親の足にしがみつきながらそっとこちらを見ていた。

目があったらすぐに反らされた。


「こーら、前に出て、ちゃんと挨拶して」


俺は女の子がいつ出てくるのか不安になったが、口を左右に動かしながらも女の子は出てきた。

しかし、今度は母親の手を握ろうとする。


「もお、赤ちゃんじゃないんだから!」

「うふふっ。可愛いじゃない」


母が眠っている結月を抱っこしながら微笑んだ。

女の子は母の顔を見つめてぺこっとして、それから俺を見た。

目が合わないようにキョロキョロ泳がせながらだったけど、女の子は俺に名前を紹介してくれた。


「たきうちみなぎです。よろしくおねがいします」

「ほら、手出して」


母親に言われ、みなぎが手を差し出してくる。

俺も手を差し出し、ぎゅっと握った。


「おれはなるみゆいと。よろしくな」

「うん」


美凪は頷き、俺に笑いかけた。

これが俺と美凪の出逢いだった。